『戦災関連資料展』見学記(神戸市中央図書館’23年8月4〜18日)

資料展の見どころ

2005年から毎年開催され、今年で19回目となる資料展。

神戸市では、市民に広く呼びかけ、戦争関連資料や体験談等を収集・保存。
主に戦争を知らない世代向けに、かけがえない命・平和について考える機会を提供されています。

個人的には、2つの視点から戦争について網羅されている展示だと感じました。

下記に説明します。

視点1:戦時中から戦後まで「神戸の街がどんな状況だったか」ひと通りわかる

これから戦争について学ぼうとしている人にとって、とてもわかりやすい内容でした。

「ドラマや映画でチラッと見たり聞いたことはあるけれど…」という程度だった灯火管制や焼夷弾、空襲についての説明や空襲被害の全容、戦争後まで網羅されていました。

お子さんの夏休みの平和学習にも適していると思います。

視点2:神戸大空襲をはじめとする「戦争当時の状況や生活、思想等」を、あらゆるものを使って伝えている

具体的には、下記のような形の展示がありました。

  • 神戸が受けた戦災概要をデータや文章、地図で説明
  • 出征する兵士がどのように召集・送り出されたかだけでなく、銃後の様子が分かる幅広い物品の展示
  • 当時空襲で使用された焼夷弾の概要や被害を少なくする取り組みを当時のポスターや図などで学べる

文章、データ、地図、物品、当時の宣伝物など色々な形で学ぶことができました。

こうした視点で今回見学したものの中で、特に強く心に残ったものや感想を次でご紹介します。

感想

終戦78年。

戦災経験者のみなさんも高齢化され、徐々に「戦争は映画の中の話」となり風化しつつあるのが実情です。

今回の資料展でも、世界が戦争に巻き込まれる危険性が高まる今だからこそ、戦争を「自分ごと」としてとらえるきっかけを与えている点に、大きな意義を感じました。

実際に当時使われていた物品も多く展示されています。

それを見ることで「もしも、今の生活がこうだったら?」とより、リアルに自分に置き換えて考えるようになるのです。

ぜひ展示内容を一部でも知っていただきたく、感想とともにご紹介します。

また、みなさんにも「自分の街の戦災について学ぼう」と思っていただくきっかけにしていただきたいと思います。

今親しんでいる神戸の街が「当時こうなったのだ」というリアリティをもって迫ってきた

まず最もショックを受け、リアリティを感じたのは写真です。

今自分が歩き回り、その色々な表情を楽しんでいるこの神戸の、あの場所もこの場所も焼け野原になったこと。

神戸は3月17日と6月5日に攻撃対象となり大きな被害を受けました。6月17日以降は、現在の東灘区や芦屋市、西宮市などの阪神間市街地に対する地域爆撃が続きました。

(中略)

また、5月3日から神戸沖への機雷投下が始まり、7月24日には川崎車輌、三菱重工業、神戸製鉄所、国有鉄道工場に模擬原爆が投下されました。

説明パネル『神戸の空襲』より引用

賑やかながらも落ち着いた雰囲気のオシャレな下山手通も。
中華街の華やかさと庶民的かつちょっとコアな魅力が大好きな元町も。

レンガ造の頑丈な建物の残骸以外は、遥か彼方まで一面がれきの山。

戦争について話に聞いていただけだったころには、感じたことのないリアリティをもって迫ってきます。

「今、もしこんなことになったら?」というリアルな緊迫感と矛盾したような「信じられない」という非現実的な感情とが入り混じり、とても複雑な気持ちになりました。

2月4日、3月17日、5月11日、6月5日、8月6日、B29部隊が神戸市街地や軍事目標を爆撃。これらの空襲を神戸大空襲と呼ぶ

説明パネル『空襲と焼夷弾』より引用

恥ずかしながら、私はこうした一連の空襲全体を指して「神戸大空襲」と呼ぶということを知りませんでした。展示されていた神戸大空襲の被害地図には、西宮〜私の住む地域のすぐ近くまでと、広い地域で被害を受けたことを示しており、その規模の大きさにも圧倒されました。

また、戦争というものは終わったあともずっと人々を苦しめることも改めて認識。

広島県:5975人
兵庫県:5970人
東京都:5330人

説明パネル『戦争孤児数の多い都道府県』より引用

原爆が投下された広島県とほぼ同じくらいの数の子どもがひとりぼっちに。

餓死したり犯罪に巻き込まれるなど苦労されたのだそうです。東京よりも人数が多かったことにも驚きました。

「いつでも犠牲になるのは兵士や一般市民なのだ」戦争の悲惨さ

  • 臨時召集令状(赤紙)
  • 千人針(戦場での無事を祈り、女性たちが布に結び目を作って千人分縫い進み、お守りとして渡した)
  • 日の丸の旗に書いた寄書き(家族、友人、同僚、近所の人たちによるもの)
  • 慰問袋(兵士の生活の不便をなくすこと、士気の高揚などを目的に日用品や食料品、薬品、写真や絵等々を入れて戦地に送った)
  • 戦争標語(「一人一人が防諜戦士」など)やイラストを印刷したマッチ
  • 防毒マスク、毒ガス被害を受けた時用の救急箱

今回の展示には、兵士がどのように送り出されたかだけでなく、銃後の様子もよくわかる色々な物品が展示されていました。

本当にドラマや映画の中でしか見たことがなかった実物を見ると、当時国全体を上げて戦争に向かっていた「世間の気風」を感じて、緊張しました。

心に残ったのは防毒マスクや救急箱。

「こんなので、本当に毒ガスを防いだり回復するんだろか…」
何だかとても「防ぐ」「手当てする」というには程遠いもののような気がしました。

筆者は以前、戦時中に毒ガスを製造していた大久野島で資料館を見学したことがあります。

製造工場での設備や防毒用の装備も不十分だったとの証言が残されています。

防毒面をしていると汗をかく。汗をかくと毒ガスが付着する。
防毒面の鼻のところが毒ガスで変色する。

【毒ガス戦】日本軍の”戦争犯罪”なぜ封印された?アメリカの思惑と真相|ABEMAドキュメンタリー(ABEMAニュース【公式】)より

このとき島で毒ガス製造に従事した人の90%が毒ガスの被害を受け(毒ガス島歴史研究所山内正之さんの資料より)、亡くなったかたは3346人(2021年現在・東広島デジタルより)、現在も健康被害で苦しんでいる元工員のかたが数多くいらっしゃいます。

戦争に勝つために、知識や対策等ずさんな状態で危険な作業に従事せざるを得ない状況に立たされた、その実態を目にしたときと同じ、やるせなさを感じました。

その上、毒ガスの知識や防毒の必要性を宣伝すると同時に、極秘に毒ガスを製造・使用していた事実。

戦争の悲惨さ、国のとった矛盾した施策には言葉が出てきません。
いつでも犠牲になるのは、第一線で戦う兵士や銃後の一般市民なのです。

空襲で使用された焼夷弾の概要や被害を減らす取り組みを当時のポスターや図で学べる

空襲で使用された焼夷弾がどういうものだったのかを説明する、当時のポスターや資料のコーナーも。

ここでも、初めて知る言葉がありました。「灯火管制」です。

灯火管制(とうかかんせい)とは、夜間に来襲する敵機に対して、航路の判断、目的地や目標等の認知を困難にさせるため一定地域において消灯、減光、遮光、漏光制限などを行うこと。

Wikipediaより引用)

民家で部屋の照明が外に漏れるのを防ぐ取り組みを周知させるための当時のポスターが展示されていました。

ドラマで照明の傘部分に黒い布をかけたりしているのは見たことがありますが、実際にどのように行われていたかを詳しく知ることができました。

下記の画像は、それ専用に販売されていた「灯火管制用電球」というもの。

戦時中に使用されていた灯火管制用電球の実物写真です。出典は神戸市ホームページ。

画像出典:神戸の戦災 資料から見る戦災 「No.32 電球(燈火管制用)2」(神戸市)

周りの部分に光が漏れにくいように、着色されています。

最後に『神戸空襲を忘れない いのちと平和の碑』を訪れました

中央図書館での資料展示の終わりに「『神戸空襲を忘れない いのちと平和の碑』がある」と案内されていたので、そちらにも行ってきました。

図書館を出て歩くこと5分ほど、大倉山公園の一番北のエリアにありました。

「神戸空襲を忘れない いのちと平和の碑」の写真です。左斜め前から撮影。緑豊かな大倉山公園の中にあります。

背面には、神戸大空襲で亡くなられたかたのお名前が刻まれています。

戦争で亡くなったかたおひとりおひとりに、それぞれの人生や家族、これからの夢や希望があった。

そのことを思うと、胸を締め付けました。
改めてご冥福をお祈りし、この地を後にしました。

見学後記、見学のいきさつ

戦争について「まずは身近な場所で起きたことを知る機会を持とう」と思ったのには、特に深い意味はありませんでした。

しかし、実際に参加してみると遠くで起きたことよりもさらに「自分ごと」として迫ってくるものがありました。

戦争の悲惨さや罪もない一般市民が巻き込まれたという悲しすぎる歴史が、「現実に起きた重大なこと」として、以前よりも重くのしかかってきました。

前回の『原爆の写真展見学記』の記事でも書きましたが…
いや、毎回書くことになると思うんですが。

「実際に足を運んで見学する」ということの大切さをひしひしと感じています。

その中でもさらに「自分の住んでいる街で何が起こっていたのか」を知ること。

そういう機会を、戦争の記憶が風化している今、大人から子どもまで幅広い世代の人が持つことがまず大切なことだと思います。

神戸市中央図書館

神戸市中央図書館の全景写真です。建物左側から撮影

『戦災関連資料展』開催期間:2023年8月4日〜18日
※展示されていた物品資料は、神戸市ホームページ『神戸 災害と戦災資料館』でも見ることができます。
所在地:中央区楠町7-2-1 中央体育館・文化ホール山側/大倉山公園内
電話:078-371-3351(ファックスは078-371-5046)

バリアフリー関連:

  • 多機能トイレは男女それぞれのトイレにあります
  • トイレの入り口と女子トイレ内部におむつ交換用台有り
  • 多機能トイレにオストメイト用設備有り

※入り口正面は階段になっているので、車椅子のかたは左側にあるスロープをご利用ください。