このコラムは
- 40代♀
- ASD/ADHD
- 編み物歴長い割に初心者
という私、橋本陽子が編み物を色んなところでしたり
「どんな糸でどう編もう?」と迷いまくるかんじの内容です。
※2023年12月〜2024年2月にプロ奢ラレヤーさん主宰の
読書サークル「三つ星スラム」内での連載企画によって生まれたものです。
(編集部に転載の許可は得ています)
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編み物コラム『あちこち編み物』2024年1月【後編】
2月3日
スキンケアやメイクするときに使うヘアバンド。
YouTubeのおすすめに出てきた作品がかわいかったので編みたくなった。
まずは、どの糸で編むか考えないと。
毛糸置き場をごそごそ。(洗濯しやすいように、コットンの糸にしようか…)
動画で使用している糸に比べると、手持ちの糸では細すぎる。引き揃えることにした。
(※「引き揃える」とは、2種類以上の糸を1本の糸として編むこと。
糸の太さが調節できるし、組み合わせによって色んな表情を楽しめる)
ベースにする糸はこちら。
桜を連想させるようなピンク。
編むにつれて色が変わる仕様になっている。
ペアにする糸は…7-8種類の糸と試し編みして、次の4つに絞った。
黄色(右下)。
かわいいけれどベースの糸がくすんで見える。
これはボツかな…
薄茶色(左下)。
これもかわいい組み合わせ。
ベースの糸によくなじんで、何か桜が咲く季節の、
あの「一瞬の夢のような時間」を表してるような…エモい。
黒(右上)。
一番「和」の感じが出ていて、ベースの糸が生きてるかんじする!美しい。
青緑(左上)。
これもベースの色が引き立ってる。
黒より少し優しい印象になり、儚さがプラスされるかんじ。これはこれでいいな。
残った3つを吟味してみる。まず、薄茶色。
ベースの色になじむのはいいけど、ぼやける。
でも、顔が優しく見えそうな点はいいな。
青緑。
ほんの少しだけ、糸が太くて色の量が多い。
もう少しピンクを前に出したいから、今回はナシかな〜…
黒。
何回見ても、この組み合わせが一番ピンクがきれいに出てる。
太さもピッタリ、黒の分量がちょうどいい。
…ということは、薄茶色か黒か。
好みだ…完全に好みだぁぁ…
(はぁ〜…どうしよう?)
この迷ってる時間も楽しい。
だけど、いくら迷ったところで、編み上がって初めてわかる部分も多いのが編み物。
しばらく眺めていたけれど、試し編みしたものをいったんかたづけた。
迷ったときはしばらく時間を置くのがいい。
決めるのは後のお楽しみにしよう。
2月5日
自分は編み物をするとき、生活が華やぐものを編みたいんだとわかった。
スキンケア用のヘアバンド。
手持ちの糸では細すぎるので、引き揃え(何本かの糸を1本の糸として編む)して編むことにした。
ベースの糸はこの桜のような色。
相棒にする糸を黒か薄茶で迷っていたけれど…
よりふわっと華やかな色合いになりそうな薄茶色に決定。
糸自体に光沢があるのもいい。
編んでみると、ベースの糸にもキラキラの部分がところどころ出てくる。
美しい。
作業しながら気分が上がる。
(あ、そうだ。洗い替えがほしいな)
せっかくなので、もうひとつは全然違う糸で編むことにした。
少しずつ余っている糸をつかって編み始めたのはド派手なトリコロールカラー。
写真ではわかりづらいが、黄色っぽい糸がゴールドのように見える。
キラッキラだ。
でも、家で使うものなんだからド派手でOK。
自分の気分が上がり生活が華やぐ、
100%好みのものを作れるのも編み物のいいところ。
2月6日
今のような季節の変わり目。メンタルの調子が悪い。
何とか深く落ち混むのは避けたいところ…
そんなとき、私はやっぱり編み物がいい。
編み物が心の安全地帯になってくれるからだ。
やってるうちに心が整うのもいい。
(何を編もう?)
編みかけの作品は、複雑な編み方のものばかり。
今は、頭を使わずどんどん進められる簡単なのにしたい。
(でも、新たに編んでみたいものも特にないし…)
そのとき、ふと頭の中に手袋が浮かんだ。
右手は完成していて、左手の途中まで編んで放置していた手袋。
(あれにするか…5本指のだし、ちょっと複雑なんだけど)
迷いつつも、編みかけの作品置き場から手袋を出してきた。
何の気なく、完成している右の手袋をはめてみる。
(…あったかいな…)
初めて編んだから、ちょっと不格好。
でも、しっかり暖かい。ふっくらと優しい感触も心地いい。
思いがけず、鼻の奥がツンとした。
小さいころ、母が編んでくれたっけ…
5本指手袋とマフラーをセットで編んでくれたのを思い出した。
母と色々ありすぎたころ、捨ててしまったけど。
(編み物苦手なのに、がんばって編んでくれたなぁ…)
決めた。
これの続きを編もう。
昔受け取った愛のバトン。
今、まず自分に向けて繋ごう。
自分で自分を暖かくしてあげよう。
暖かさが大切な何かを思い出させる。
手で編んだ物にはそういう、不思議な作用が確かにあると思う。
2月7日
編みかけのままだった、5本指手袋。
昨日、また1年ぶりに編み始めた。
本当は、再開するのが少しおっくうだった。
各指の付け根部分の編みかたが慣れるまでややこしいからだ。
薬指が終わり、いよいよ中指の付け根部分まで来た。
やっぱりややこしい。
本を見ただけでは、やりかたが思い出せない。
色んな編み物サイトやYouTubeで何回も確認したあと、取りかかる。
(どこに針を入れたらいいんだっけ?)
また編み針に糸をかけ損なった。むむむ。
しばらく格闘したあと、ようやくややこしいところを通過できた…ような…
やり方があってるかどうか、いまいち分からない。
ああ、また不格好になってる。
でも、今はいい。何回も練習あるのみ。
少し進んだ。上手になるまで、何回も編もう。
この、自分の手袋が完成したあと…
母の手袋、父の手袋まで編むころには、少し不格好を返上できるだろうか。
2月8日
基礎はやっぱり、大事だと思う。
編み物には、作品ごとに「編み図」というレシピがある。
これを見れば、どんな編み方でどれだけ編めばいいかがわかる。
知らない編み方をするとき、ひとつひとつの記号の意味は分かっても、
どんな形に編み上がるのか全くイメージできなかったり、
そもそもの編み方がわからないこともある。
「編み図が見えない」状態だ。
でも、教わったりしてその編み方を経験すると、似た作品の編み図を見ただけで
「あぁ、はいはい。こういう手順で編んで、こういう形になるのね」と理解できる。
「編み図が見えるようになる」のだ。
この繰り返しで「見える編み図」を増やす。
すると「こう編めばこんな形に出来上がる」という基礎のデータベースが頭の中にできていく。
そこから、必要なものを抽出して組合せれば、好きな形を自由自在に作れる。
オリジナル作品でも何でも編めるのだ。
このことが分かってるつもりで分かってなかったときには
「(基礎とか大して分からなくても)大丈夫でしょ〜!」と、どんどん好きに編もうとした。
そして、当たり前に挫折した。
思い出すたびに、苦笑いが出る。
今日も編み図を見て、テキストで編み方を確認しつつ、作業をする。
基礎のデータベース、もっと大きくしたい。
そうすることが自由に表現することにつながっていると気づいてから、苦にならなくなった。
↓2024年2月後編に続く↓
編み物コラム『あちこち編み物』2024年2月【後編】